「0歳から、何かしてあげたほうがいいのかな?」
あかちゃんとの生活の中で、そんなことを考えるママもいると思います。
文字や数にも早くから触れさせたほうがいいのかな、知育のおもちゃも用意したほうがいいのかな、何か習わせたほうがいいのかな——わが子のことを大切に思っているからこそ、いろいろ考えますよね。
もちろん、文字や数に触れることも、知育を楽しむことも、素敵な経験のひとつです。
ただ私は、0歳の時期に「何を早くできるようにするか」だけを急がなくてもいいと思っています。
それよりも、この時期だからこそ大切にしたいことがあります。
音楽を通して、あかちゃんの心を育てること。
そして、親子で「楽しいね」「かわいいね」と感じられる時間を重ねること。
音楽講師として、そして保育士・幼稚園教諭として、たくさんの親子と関わってきた中で、私はこの時間をとても大切にしています。
0歳の音楽遊びは、難しく考えなくて大丈夫です
「音楽遊び」と聞くと、楽器を用意する、上手に歌ってあげる、リズムを教える——そんな特別なことを想像するかもしれません。
でも、もっとシンプルで大丈夫です。
ママが歌う。抱っこして一緒に揺れる。「トントン」と言いながら身体に触れる。音楽に合わせて一緒に歩く。そして、あかちゃんの顔を見る。
これだけでも、親子で音楽を楽しむ時間になります。
大切なのは、「何をできるようにするか」だけではなく、「音楽を通して、親子でどんな時間を過ごすか」。私はここを大事にしています。
なぜ「何を教えたらいい?」と迷ってしまうのでしょう?
子育てについて調べると、本当にたくさんの情報があります。「これをやったほうがいい」「あれも早く始めたほうがいい」。知れば知るほど、「うちの子にもやってあげたほうがいいのかな」「何もしなくて大丈夫かな」と迷うこともあると思います。
特に、わが子のことを一生懸命考えているママほど、たくさん調べます。だからこそ、「正解」がわからなくなることもありますよね。
でも、0歳のあかちゃんとの時間は、何かを教える時間だけではありません。ママの声を聴く。触れてもらう。音を感じる。身体を動かす。ママの顔を見る。そして、自分の反応をママに見てもらう。そんな日々の関わりも、大切にしてほしいと思っています。
そこで今日は、特別な道具がなくても家庭でできる音楽遊びを3つご紹介します。
おうちですぐできる、0歳の音楽遊び3つ
1 童謡を歌いながら「揺れる・止まる」
まずは、ママが歌いやすい簡単な童謡をひとつ選んでみてください。あかちゃんを抱っこして、歌いながら優しく身体を揺らします。
そして、歌の途中で……
ピタッ。
歌うのを止めて、身体の動きも一緒に止めます。そこで、あかちゃんの顔を見ながら、
「あれ?」
また歌い始めたら、身体も優しく揺らします。これを繰り返してみてください。
大切なのは、あかちゃんに決まった反応をさせることではありません。止まった瞬間にママを見るかもしれない。笑うかもしれない。「あれ?」というような表情をするかもしれない。今日は特に反応しないかもしれません。それで大丈夫です。
「今、どんなふうに感じているのかな?」——そんな気持ちで、あかちゃんの顔を見てみてください。「ちゃんとできたかな?」ではなく、親子で音楽の変化を一緒に楽しんでみましょう。
2 「トントン」で、いろいろなところに触れてみる
次は、ママの声と触れ合いを使った遊びです。
「トントントントン」と言いながら、あかちゃんの身体のいろいろなところに優しく触れてみます。そして、速さも変えてみましょう。
ゆっくり、「トン、トン、トン、トン」。少し速く、「トントントントン」。同じ「トントン」でも、速さが変わるだけで感じ方が変わります。
特別な楽器は必要ありません。ママの声と手があればできます。「トントン」ということばの響き、そのリズム、ママに触れてもらう感覚。そんなものを親子で一緒に楽しんでみてください。
ドレミファベビーでも、他にも「ぽんぽん」「きらきら」といったオノマトペを音楽の中で大切にしています。
3 ママの好きな歌に合わせて、抱っこで歩いてみる
3つ目は、とてもシンプルです。ママが好きな歌を歌ってください。「あかちゃんのために、何か特別な歌を選ばなくちゃ」と難しく考えなくて大丈夫です。
あかちゃんを抱っこして、ママが好きな歌を歌いながら、その歌のビートに合わせて歩いてみます。そして、歌が終わったら……歩くのもおしまい。また歌い始めたら、歩いてみる。
ママが感じている音楽のビートを、抱っこを通して親子で一緒に楽しみます。ここでも、「上手にできたか」を確認する必要はありません。音楽を聴きながらママと一緒に動く。その時間そのものを楽しんでみてください。
3つの音楽遊びに共通していること
ここまでご紹介した3つの遊びには、共通していることがあります。それは、あかちゃんに何かを正しくやらせようとしていないことです。
ママが歌う。一緒に揺れる。止まる。触れる。歩く。そして、あかちゃんを見る。
あかちゃんが笑ったら、「楽しいね」。じっと見ていたら、「聴いているのかな?」。そんなふうに、あかちゃんの今の姿を見てあげる。音楽は、その親子のやりとりをつくるきっかけにもなります。
「心・ことば・リズム・身体・親子の関わり」を音楽の中で
私が「ドレミファベビー」で大切にしているのも、ただ音楽を聴かせることではありません。音楽を通して、安心感、ことば、リズム、身体の動き、親子の関わり、音楽的な感性——こうしたものに、やさしく触れていくことです。
たとえば、ドレミファベビーにはオノマトペを使った童謡があります。実際に、童謡を何度も聴きたがるようになったあかちゃんもいました。「おしまい」と画面を閉じると泣いてしまうほど歌が好きになり、オノマトペへの反応も増えていきました。1歳になるころには口ずさむようになり、親子でオノマトペの部分を一緒に歌うようになったそうです。
ママ自身もそれが嬉しく、歌を歌うとお子さんもとても喜んでいると教えてくださいました。
最初から「ことばを覚えさせよう」と頑張るのではなく、親子で音楽を楽しむ。その中で見せてくれるあかちゃんの反応を、大切にしていきたいと思っています。
あかちゃんだからこそ、いろいろな音やリズムに出会ってほしい
あかちゃんの音楽というと、シンプルでわかりやすい曲を想像する方もいるかもしれません。でも私は、あかちゃんだからこそ、いろいろな音楽に自然に触れてほしいと思っています。
ドレミファベビーのオリジナル楽曲には、西洋音階・日本音階、3拍子・6/8拍子、曲中での拍子の変化、ジャズのスイングなど、さまざまな音楽的な要素を取り入れています。さらに、季節のことばやオノマトペも取り入れ、その時期だからこそ出会ってほしい音楽を大切にしています。
もちろん、あかちゃんに「これは3拍子だよ」と教えるわけではありません。音楽として自然に出会い、親子で感じる。それでいいんです。
「うまれてくれてありがとう」を音楽で伝える
そして、私が音楽遊びの中で大切にしているものが、もうひとつあります。それは、親子の心のつながりです。
何かができたから褒める。何かを覚えたから認める。それだけではなく、「生まれてきてくれて、ありがとう」「あなたが大切だよ」という気持ちを伝える。
ドレミファベビーでは、音楽を通して親子の愛着関係を大切にすること、そして子ども一人ひとりの個性とペースを尊重することを教育理念にしています。0歳の今だからこそ、私はそんな時間を大切にしたいと思っています。
「今日は何ができた?」ではなく、「今日は一緒に楽しめた?」
0歳から何かしてあげたい。その気持ちは、とても素敵なものだと思います。文字や数に触れることも、知育を楽しむことも、その選択肢のひとつです。だから、どちらか一方を選ぶ必要はありません。
ただ、ときどき、「今日は何ができるようになった?」だけではなく、「今日は一緒に楽しめた?」と考えてみてほしいのです。
歌ったら、こちらを見てくれた。「トントン」としたら、ニコッとした。抱っこして歩いたら、気持ちよさそうにしていた。今日は眠くて、ほとんどできなかった。それも、その子の今日の姿です。
では、「あかちゃんに合った音楽」ってどんな音楽?
ここまで読んで、「おうちで音楽遊びをしてみよう」と思っていただけたら、次に少し考えてみてほしいことがあります。
それは、「あかちゃんに、どんな音楽を届けるか」ということです。
「あかちゃん向け」と書かれていれば、どんな音楽でも同じなのでしょうか。私は、そうではないと考えています。発達、ことば、リズム、身体の動き、親子の関わり——こうした視点から音楽を見てみると、選び方も少し変わってきます。
この続きは、こちらの記事で詳しくお伝えしています。
まとめ|0歳の音楽遊びで大切にしたいこと
0歳の時期、「何かしてあげなくちゃ」と思ったときこそ、思い出してほしいことがあります。
早くできるようになることだけが、子育ての目的ではありません。
歌う。揺れる。止まる。触れる。歩く。そして、あかちゃんの顔を見る。
特別な道具がなくても、今日からできることがあります。上手に歌えなくても大丈夫です。あかちゃんが思ったように反応しない日があっても大丈夫。
「できること」を増やすだけではなく、音楽を通して心を育てる。そして、親子の「今」を一緒に楽しむ。それだけで、今日という日は十分に豊かな音楽の時間になります。
あかちゃんを抱っこして、ママの好きな歌を歌ってみませんか。
あかちゃんがどんな表情をするのか、ぜひ見てみてください。
この記事を書いた人
竹内夕雨子
声楽専攻|音楽講師歴22年|保育士・幼稚園教諭歴8年
大学で声楽を専攻し、音楽講師歴22年、保育士・幼稚園教諭歴8年。これまで約3000組の親子と関わってきました。中学校教諭音楽免許、保育士資格、AMI国際モンテッソーリ教師資格を持ち、リトミック教育研究機関ではカリキュラム・教材研究にも携わっています。
第一子の子育てをきっかけに、
「あかちゃんの発達に合わせた、本当に良い音楽を届けたい」
と考えるようになり、ベビー音楽教育メソッド「ドレミファベビー」を開発しました。
幼児教育を専門とする作曲家とともに発達の視点から音楽を設計し、歌詞や内容は私自身が一つひとつ大切に作っています。
あかちゃんの月齢や季節、ことばの育ちに寄り添いながら、
「音楽を通して、親子の”今”を大切にする時間」
を届けています。
